ご挨拶

日本の本離れが激しいようです。若者だけではなく全年齢で読書量は減少傾向にあり、増える兆候を全く見せません。ある新聞の調査によると、本を一番読んでいる年代は小学生なのだそうです。彼らが絵本を読み漁るなか、大人たちはそんなことをすっかり忘れてしまっています。

私は、そんな中本に囲まれた人生を送ってきました。剣と魔法で創られたファンタジー小説。歴史を浮かび上がらせる時代小説。未来を考える、政治や社会学の本。人間の真理をひたすらに追究する、哲学の本。本は私に、いろいろなことを教えてくれました。

本の作者たちには、感謝してもしきれません。彼らは小説の登場人物たちの活躍を通して私に未来への希望を与え、その卓越した頭脳を用いて私に道を指し示し、生み出した名言、名文で私を感動させました。

今度は私が、その魅力を誰かに伝える番です。

本を読む楽しさを、学ぶ面白さを、日本中に伝えたい。日本中の読書量を、今の二倍にも三倍にもしたい。そう思って開いたのが、この菜泉塾です。

 

菜泉塾の先生方は、本の中にいます。

先生方は極めて個性的です。ひとりひとり、言っていることが違ったり、時に喧嘩をしていたりします。中には道を示してくれる師ではなく、反面教師として存在する人もいるかもしれません。実在する人物もいれば、そうでない人もいるでしょう。しかし、彼らは本を通じ、私たちに語り掛けてきます。それは著者たちの人生が詰まった、かけがえのないものなのです。学ぶものは、どんなに些細なことでもあるはずです。

この塾は、そんな知への純粋な営みをお手伝いいたします。別に構えなくていいのです。軽い気持ちで、中身を知りたい本を、見るだけかまいません。先生方は必ず、私たちを出迎えてくれます。彼らは人にものを伝えるために、本を書いたのですから。

 

2018年11月7日

菜泉塾 塾長

泉遼樹